フクシマの健康への影響

2013年3月6日 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の報告

2013年3月6日、2011年3月11日の大震災がきっかけとなって起こった原子力発電所事故から2年を機に、「フクシマの健康への影響」について核戦争防止国際医師会議(IPPNW)が報告します。この報告には、原発事故から2年しか経たない現在において懸念される問題点を明確に提示しました。ニュールンベルグのアルフレード・ケルプライン博士は、日本全土で、事故から9ヵ月後から出生率が大幅に減少していることを指摘しています。

2011年12月、日本全国で4362件の出生減少が確認されましたが、その内の福島県内の出生減少は209件のみ。原発事故から9ヶ月経った時点での新生児死亡件数の上昇も、原発事故がもたらす健康被害が、福島県だけでは留まらないことを示しています。特に憂慮すべきは、最新の報告で5万5000人を超える福島県の子供たちから甲状腺のう胞・結節が見つかったことです。この結果は、人口密度の高いこの島国の、47ある都道府県の一つのものに過ぎず、あの事故で大気に放出された放射能核種のおよそ20%が起している事象に過ぎません(80%は太平洋側の大気と海水を汚染しました)。IPPNWの一人であられる、ヘアフォルド小児病院の元主任医師ヴィンフリート・アイゼンベルグ博士によると、成人と違い、子供の甲状腺異常は癌になる前兆であると警鐘を鳴らします。

 

IPPNW医師団は、日本全国の子供たちの甲状腺検査を徹底することを要請します。無意識のうちに被曝すること、たとえば放射能汚染された食品が流通し消費されることなどから、癌発生率の上昇することが予想されます。

 

IPPNW医師団は、今回の原子力事故がもたらした、現在に至るまでに出されたデータを、世界に公表する必要があると考えています。科学専門誌で発表された2012年秋のセシウムなどの放射線核種に汚染された土壌調査から、IPPNWの会員であるヘンリック・パウリッツ、ヴィンフリート・アイゼンベルク博士、ラインホルト・ティールは、外部被曝により2万人から4万人の癌患者がでることを予測しています。この数値は、世界保健機関(WHO)が指定する0.1/Svに基づいて計算されています。しかし、最近では、そのリスクは倍であると報告されており、この非常に高い放射能汚染によって推定される癌患者数は8万人にものぼると考えられます。

 

日本の環境省が13万3000件の汚染食品を計測し、そのうちの1万7000件のみを公表したことからも、汚染食品を摂取したことによりもたらされる癌発生率が懸念されます。IPPNWは汚染食品摂取からおこる内部被曝で1万8000人から3万7000人の癌患者を推定しました。

 

2011年に事故収束のために東京電力福島第一原子力発電所で作業にあたった方々に関しては、ほとんど資料が提供されていません。そのため、チェルノブイリ事故の経験と元に、恐らく1万7000人が深刻な病状に悩まされることが予測されます。

 

このIPPNWの報告は、2月28日にWHOが提出した報告 „Helth risk assessment“ とは、著しく矛盾するものです。IPPNWの一員であるアレックス・ローゼン博士は、WHOの報告には福島県の一部の選ばれた地域のデータが使われており、これでは相対的評価とは言えないと、WHOの報告の不十分さを指摘しています。